Goin' Home

Taking a detour to meet haunting discs

The Big Rock Candy Mountains

2000年公開のコーエン兄弟による"O Brother!" 私は、コーエン兄弟の映画が結構好きで、映画館で見ました。ドタバタのコメディである一方で、ホメロスの「オデュッセイア」を下敷きにした内容でもあり、興味深いものでしたが、使われている音楽も良かったですね。

1930年代初頭という時代設定、ディープ・サウスという舞台設定を考慮した楽曲がふんだんに使われることによって、この映画をより素晴らしいものに仕立て上げていると思います。これらの楽曲のセレクトはT Bone Burnetによるもので、流石!というほかありません。

特に、Harry McClintockの"The Big Rock Candy Mountains"を映画冒頭で使うことにより、George Clooney演じるEverettをはじめとする脱獄囚3人を待ち受ける物語を暗に提示し、この映画の空気感をつくっています。

"The Big Rock Candy Mountains"の歌詞では、一人のホーボーが登場し、”オレと一緒にBig Rock Candy Mountainsを見に行こう”と誘ってきます。そして、続いて、Big Rock Candy Mounatinsが如何に素晴らしいのかが説明されます。

ちなみに、arry McClintock自身が、少年の頃に家出をしてサーカスの一団に加わり、フィリピン、アフリカ、中国等にも行ったホーボーでした。

”Big Rock Candy Mountainsには、晴れわたる大地があり、そこでは、毎晩良く眠ることができる。また、青い鳥は歌い、森の茂みには施しが宿り、レモネードの泉が湧き出てる。そして、雌鳥は、ボイルされた卵を産んでくれる”と、誰しも田舎に住む子供が一度は想像した覚えのある(?)夢のようなことが歌われます。

そして、"Big Rock Candy Mountainsでは、警官も、その犬も役に立たない。汽車を無賃乗車しても捕まらない。また、監獄に入っても重労働もなく、すぐ出ることができる。そう、だから、Big Rock Candy Mountainsに行こうぜ”と。かなり意訳しましたが、こんな感じの歌です。

2022年の現在から見ると、随分ゆるく、おおらかな時代に思いを巡らせるのも、楽しいものと思います。Youtubeにアップしましたので、ご興味がございましたら、ご覧ください。

Harry McClintock ; The Big Rock Candy Mountains

Whoop 'Em Up!

ボードビル、ミンストレルの河岸を垣間見せる録音を残したUncle Dave Macon。

Uncle Dave Maconは1870年のTennessee生まれです。随分昔の人です。Maconは、1900年頃から運送会社を始めましたが、当然ながら車のない時代です。貨物車をラバで引かせ、宣伝等の目的で、バンジョーを弾きながら歌っていました。

Maconのバンジョー演奏は、彼の家族が経営していたホテルにたびたび宿泊していたボードビル・サーキットのメンバーの手ほどきを受けて習得したものです。

ラバに引かせる貨物車で、愉快に歌うMaconは、市井の人々を楽しませたようですが、モータリゼーションの到来とともに、1920年前後には、運送会社をたたみ、ボードビル・サーキットに加わることにより生活の糧を得るようになります。そして、1924年7月に初めて録音の機会に恵まれ、それ以降、太平洋戦争開始頃までの間に、Vocalion, Brunswick, Bluebird等に多くの演奏を残すことになります。

そのきっかけは、何よりも、1925年11月6日にRyaman Auditoriumで行われたコンサートでの大衆の喝采でした。そして、Ryaman Auditoriumは、同月28日に放送開始するラジオ番組"Grand Ole Opry"の舞台となり、Maconは当番組の最初のスターとなりました。

Maconは150曲以上の録音を残しましたが、バンジョーを弾きながらのほら話、馬鹿話を交えた口上から始まり、バースに入るパターンが多く見られます。このあたりは、ボードビル・サーキットでのスタイルを踏襲した、いわば、ステージのミニチュア版という感じなのでしょう。このような様子を垣間みることができる1枚を紹介いたします。

1926年4月16日にSam McGeeとともに録音した"Whoop 'Em Up Cindy"。 "はじゃぎたおせ!シンディー(勝手な和訳です)”とのタイトルどおり、賑やかで愉快な演奏だと思います。

よろしければ、お楽しみください。

 

Great Depression前後でJAZZは変わった?

Kid Ory's Band in 1910

Joe Bussardは、"real jazzは、great depression"を機に、空中に消えてしまった”と言います。

"real Jazz"とは、そもそも何を意味するのかということもありますが、同じjazzという音楽でありながらも、纏う空気の異なる音楽であると思います。

 

レコードでいうと、初めて録音されたブラック・ジャズと言われているKid OryのLos Angels録音が1922年6月、そして、King Oliver、Louis Armstrongにとっての初録音がRichmondで行われたのが1923年4月。これらの録音から始まり、 1931年頃までのわずか10年弱の間に、未だ決して消えることのない大きなたくさんの足跡が残っています。

この時代のjazzの特徴を端的に表現することは不可能ですが、「泥臭さ」・「洗練」が絶妙なバランスで存立しています。一つ言えることは、必ずしも演奏が全てコレクティブで、泥臭いという訳ではないということです。

計算され工夫を凝らしたオーケストレーション・ハーモニーを伴うグループ表現をJelly Roll Morton's Red Hot Peppersの演奏にみることができ、また、Hot Five, Hot SevenでのLouis Armstrongのハイノートを交えたブリリアントなソロ・Johnny Doddsの土臭い演奏等、後年では決して再現不可能な多くの演奏が残されています。更に、Duke Ellingtonの洗練された多くの演奏も特質するものです。

では、great depressionの後のjazzは如何なるものか?一部の例外を除き、確かに、以前のjazzに付帯していたユニークな空気はなくなります。一方で、絶妙なアレンジが目立つようになり、また、人が踊ることをより意識したメリハリの効いた方向に進んでいったと思われます。

 

f:id:Griver:20220416212128p:plain さて、James P. Johsnonの作曲で"Go Harlem"という曲があります。本人も1931年3月に録音しており、ボーカルを担当したAndy Razafが” Go Harkem, Get Rhythm, Don't Worry..."と歌詞をつけた1曲です。

great depressionの渦中の録音ですが、未だ、20年初頭からの続く演奏スタイルです。

Jimmy Johnson & His Orch. ; Go Harlem

 

 

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続いて、Chick Webbによる同曲のDecca録音です。この演奏では、936年6月2日に録音されたものです。Edger Sampsonがアレンジを施しており、思わず、足でリズムを踏みたい感じのパンチの効いた内容に仕上げています。

こちらも、Youtubeにアップしましたので、以下リンクから、ご覧(お聞き)ください。

Chick Webb and His Orch ; Go Harlem

もっとも、この1曲の演奏の相違だけを以て全てを表わせませんが、一端は感じれるのはないかと思います。

Revisiting The Boswell Sisters

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テンポに緩急をつけた3人のボーカル、メジャー・マイナーの転換等による生成されるハーモニーは、"ジャズ"そのもの

彼女たちがトリオでレコードを残した期間は、1930年から1936年までの短期間であるものの、Brunswickに良い録音を残しています。その中で1枚選ぶのであれば、"Heebie Jeebie(Brunswick 6173)"です。

"Heebie Jeebie"は特に意味のないワードです。このワードがレーベルに初めて刻まれたのは、Louis Armstrongが1926年に録音した"Heebie Jeebies(Okeh8300)"です。当レコードは、アドリブのスキャットが録音された初めてのレコードとも言われるものです。

さて、当盤は、1931年の録音。当然ながら、Louisのレコードを意識したタイトルであり、彼女たちは、LouisがOkeh8300でやったように、意味のあるような、ないような歌詞を、3人の絶妙なハーモニーで"聴かせる内容"に仕上げています。

また、当盤のもう一つの魅力として、Manny Klein、Tommy Dorsey、Jimmy Dorsey、Eddie Langといった若き白人ジャズミュージシャンの演奏が挙げられます。Youtubeにアップしてみましたので、よろしければご覧ください。

The Boswell Sisters ; Heebie Jeebie

Boswell Sistersは、多くのジャズファンに聴かれるアーチストではないとは思いますが、このような魅力的なレコードを聴かないのは、もったいない!と思います。

Pedal Steel Guitarの名手 Speedy West

f:id:Griver:20220416203305p:plainPedal Steel Guitarの良い演奏といえば、何よりもまずは、Speedy WestのCapitol盤でしょう。

Speedy Westの、まるで、弦の上で縦横無尽に飛び跳ね滑るような、イマジネーションたっぷりの演奏は、2022年度の現在においても、我々を楽しませてくれます。

Speedy Westは、おもに、1940年後半から50年代にかけて、Jimmy BryantとのデュオでCapitolに録音を残しています。それらの演奏は、概ね、Jimmy Bryantが心地良いリズムを刻み、Speedy Westがスティール・ギターを超絶テクニックで、また、特にコミカルに演奏するスタイルでした。当盤は、そんな一連のCapitol録音のラジオ局等への頒布盤です。録音は1953年頃です。Youtubeにアップしてみましたので、以下リンクから、ご覧ください。

Speedy West with Jimmy Bryant ; This Ain't The Blues

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また、彼らは、Tennessee Ernie Ford等の伴奏をこなしているものもあり、ユニークな伴奏を提供しています。ここでは、Ella Mae Morseの1枚を紹介いたします。

彼女は、10代でJimmy Dorseyのバンドに雇われたことを皮切りに、Jazz, Blues、そして、Countryスタイルでの歌を多く残したシンガーです。

Ella Mae Morse ; Oakie Boogie

当盤は、1952年頃の録音で、Nelson Riddleのオーケストラと伴に、Speedy WestとJimmy Bryantが伴奏をつけており、彼らの演奏を楽しめる1枚となっています。